会社の同僚にお誘いいただき、八雲茶寮の朝茶に行ってきた。朝の冷たい空気のなか、腹を減らしてお店に向かうため、到着した頃には体も心も研ぎ澄まされるような感覚になっていた。炊き立てのお粥を振る舞ってもらうのがメインで、炊き上がるまでの1時間に、腹を満たさない程度の前菜が出される。そこで、生まれて初めておもゆを飲んだ。おもゆは、お粥の上澄みの汁である。白く濁った液体をすすると、遠く果てにお米のふくよかさが感じられ、空腹にやさしく染み渡っていった。普段の生活で口にしていたら無味と片付けてしまうかもれしれないほど淡く、繊細な味を感受できる嬉しさが込み上げてくる。これの濃くて強烈なものがお粥かとドキドキしながら待った。お粥の炊き上がりに合わせて、野菜の蒸したのや、副菜が運ばれ、贅沢な一膳が目の前に出来上がる。実際にお粥を口にしてみると、おもゆとはまた別物で、普通の白米よりもお粥の方が米を美味しく食べる料理なのではと気づく。
それ以来、自宅でもよくお粥を作るようになった。炊飯器で炊いたものもおいしいし、小鍋で茹でると米の輪郭が残ってまた違うおいしさがある。白米との大きな違いは、食べると体の芯から熱くなることだ。お粥の粘り気によって、胃に渡っても熱を保持し続けるのだろう。わたしはつい食べ過ぎて、眠くなり、体温が下がり、消化以外の機能がシャットダウンしてしまうことがまあまああるのだが、お粥だとその心配がないのもいい。
「つらい時はあったかいもんを飲め」といった先輩の言葉を、入社一年目からずっと頭に置いていて、気持ちが傾きそうな時は、すかさずお茶を沸かし始める。お粥は何よりも体を温めるので、一番の薬かもしれない。
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