2022年に読んだ漫画

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山を渡る

この漫画は、大学山岳部のクライミングが上手い女子・男子の先輩が、初心者一年女子3人組を、山の楽しさに少しずつはまらせていく話。おもしろいし、キャラクターや世界観などまるっと好きで、仕事に追われがちだった月はログインする感覚で読み浸っていた。1巻の頃から絵が上手だったけれど、メキメキと描写力を上げられていて、5巻の沢登りの回では岩の壁に囲まれた狭いスペースの中、水面、壁、苔に反射する多様な光まで描かれていて圧倒された。沢登りの魅力は、山に閉じ込められることにあるのかもしれない。

以前は山漫画に全く興味がなかったし、山登りの魅力について「風景が綺麗」「自然に癒される」と言われても、ピンときていなかった。山登りにはまった今でも、それでは魅力を伝えきれないように感じている。山の魅力について本作では、ひとつ「能動性」をポイントに描かれている。山登りは登り方も、楽しみ方も自由。自分で自分を充実させる行為。そこに豊かさがある。表面的な楽しさだけでなく、思考を深めているところもこの漫画の好きなところだ。
https://www.kadokawa.co.jp/product/322201000708/

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氷の城壁

この漫画がすごい大賞に選ばれた「正反対の君と僕」の作者による前作。スマホに特化した縦型マンガで、表現の制約を受けながらも、登場人物たちの感情で読者を引っ張っている。この作品を読んで、世の中でこれが普通とされていることに対して異議を申す作者の精神を強く感じた。

冒頭の大きなテーマとしては、俗にいう「男子は好きな女子のことをからかってしまう」伝説に、それって笑って許されることだっけ?とつっこむ。この問題のややこしさは二つ。加害者に悪気はなく、むしろ好意があること。周囲もそれをわかっているから深刻にとらえず、むしろ好意を持つ人(=加害者)の方に肩を入れがちなこと。「あいつは〇〇ちゃんが好きなのに、なんでそんな感じ悪い態度を取るの?」と二次加害にも及びやすい。からかいの内容も「ガリ勉」と揶揄されたり、勝手に頭を撫でられたりと関係によっては許されるもので、だからこそ許せない自分がおかしいのではと、主人公は自身を責めてしまう。こういった問題を学園もので提示したことは、とても新鮮だった。その他にも、少女漫画の定石には乗らないぞという作者の強い意志を感じられて、それがこの漫画の深みを作っているように感じる。
(正反対の君と僕も、登場人物の感情を深く考察しているからこそ人間味が生まれていて、そこがこの漫画の魅力と思っていたら、会社の先輩はギャグがいいよねと言っていた)
https://afternoon.kodansha.co.jp/c/fragile/

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フラジャイル

好きすぎて簡単に書けない。ルーティンと化して魂がなくなりがちな医者業の問題を描いたり、生死を左右する病名診断の結果を100%これだと宣言する病理医の覚悟を描いたり、好きな要素が多すぎる。日本の現実をストーリーに載せながら闇も光も提示するという点はハコヅメにも共通するかも。フラジャイルならではのいいところは、シーンがかっこいいところ。難問の病理診断にあたり、食べる時間も寝る時間も削って顕微鏡に向かう主人公。一休みに同僚と外で月を見ていて、食べていないとどんどん研ぎ澄まされていく感じがして、あと少しでたどり着けそうと言った宗教チックなまっすぐさ。薬の営業担当が、自社で開発した抗がん治療薬が世に出られるよう、会社の圧力にも屈せずに「愚かでもいいの。守りたいの」とつぶやいたのも眩しかった...。永遠に読み続けたいです。
https://afternoon.kodansha.co.jp/c/fragile/

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ガールクラッシュ

K-POPアイドルを目指して、事務所の練習生として所属し、器用貧乏ながらも一歩ずつ前進する物語。なんでアイドルをやりたいかっていう問いに対して、明確に答えを描いていて感動した。主人公は才色兼備の優等生だが、性格は平凡、むしろちょっと悪い。好きな人に振り向いてもらえず、自分自身のことも好きになれない。「本物のかっこいい人になりたい。いつだって自分を信じて、堂々と胸を張れるような」そう思って、主人公はK-POPアイドルになることを決意する。劣等感や自己嫌悪が裏返しになって、かっこいいアイドルになりたいと憧れるのはすごく納得できた。

この作者の前作はフィギュアスケートを題材にした「氷上のクラウン」という作品を描かれていて、ダンスを描くことに興味があるのだと思う。アニメ的な美しさが、髪の先からつまさきまで込められていて、絵がとても魅力的。女の子も全員かわいい。triggerが好きな人はこの人のこともきっと好きになると思う。
https://manga.line.me/book/detail?id=B00162599649

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ひかるイン・ザ・ライト!

ガールクラッシュとは全く毛色の違うアイドル漫画。家族が銭湯を経営していて、風呂場で歌うことが好きな女の子が、ステージに憧れてグローバルで活躍するアイドルを目指す。プロデューサーのM・葉山といい、公開型オーディションといい、JYPを漫画にしているように見える。周りの人に言われたささいなことを気にしたり、上手くなるために体のどこを動かせばいいのか考えたりと少し具体的で、エッセイのような地に足ついている感じが特徴的。ダンスが上手い人と下手に見える人では何が違うのか観察するシーンがあったりするので、こまかいところでおもしろさを感じられる。課題曲に°C-uteの羨んじゃうが使われていて(°C-uteの中では有名じゃない曲だと思う)、選曲までこまかい。アイドルの裏側を具体的に追っていくという視点は、今求められていることでもある気がしていて、今後の展開が楽しみ。
https://manga.line.me/product/periodic?id=S113469

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推しが武道館いったら死ぬ

最高の百合漫画。1巻でた当初から読んでいるけれど、アイドル漫画が続いたのでこちらも。ガールクラッシュとひかるインザライト!はグローバルの活躍を目指すサクセスストーリーに対して、推し武道は地下アイドルがゆるく、でも切実に武道館を目指す話。ファンとアイドルのやりとりや、それぞれの生臭さが描かれているのがおもしろい。YouTubeの企画をこれからどうするか議論しているシーンで、メジャーデビューしている子の動画を参考に見てみると、編集もそうだけど企画からして違う...?ということに気づくところがよかった。(地下側はドーナツ何個食べられるかみたいな企画で、メジャー側はライブ音源でどの時のライブか当てるイントロクイズ)最近、モーニング娘。とStrayKids(韓国のJYP所属アイドル)の動画を見比べて、金とかじゃなくて本当に企画力が違うということを感じていたので、本当だ…と思った。
https://www.comic-ryu.jp/_oshi/

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